夢を見た。



友人の夫婦二人が営む森の中 (ブナの原生林が近い) のアトリエ・レジデントハウス、主人は海外で滞在製作中。

今の時期は人の往来が少ないので 奥様が管理や清掃を行なっている。
 

一人招かれた私は 夜、食事中に突如視界が暗転し意識を失う。

目覚めると床の上 応急処置を受けた後だったが 敷かれた布 (床のカーペット) は鮮血の海。

私の容体如何で数十キロ先の病院から人を呼ぶべきか検討しているとのことだった。

(救急車は主要地区に優先的に使われ山間部にはほとんど来ないとのこと)
 

 
私は 熊に襲われていた。

 

 熊の左手の爪の一撃で左斜後頭部の一部 (クモ膜下部位か?) と頭蓋に損傷が起き意識と記憶に混濁が見られたが、

私の強っての願いと山間部夜間の事情からその後は当地で静養することになり、制作を続けながらも体調を回復していった。 

(鮮血と白と緑のタオルによるそれはそれは美しい撮影を持った)


 
そしてまた数日後、私は夜間に再び意識を失い 消えゆく意識の端で熊の到来を知る。 

二度目の襲撃後は病院へ搬送され。幸い大事には至らなかったので、少々の処置と介抱があり またしても私の強っての願いで翌日レジデンスに戻る。

(緊急時のため病院にカメラとフイルムを持参し忘れていた) 

普段は個室での制作であったが、食事の際は友人 (奥様) が同行することになる。

 
 
その夜、わずかの間一人となった私は 三度目の襲撃を偶然の体重移動で免れ、熊と組んず解れつの攻防の末、工房用のバールで熊の鼻を打つことに成功しひとまずの安堵を得た。

咄嗟に怒りと殺意、人間という支配的生き物のプライド的・尊厳から来る蔑みの感情と 同時に深い恐怖を感じた。咄嗟に若い彼の頭蓋を穿ち 殺害しようとする私。 

が、手を下そうという瞬間に 一瞬一瞥した友人の恐怖の表情を見て気を取り直した私は 彼を殺めることをやめることができた。

若い熊はそれでも私とほとんど同じだけの背丈 (体高でなく二本足直立のサイズ) があり、鋭利な 赤黒い爪を持っていた。 

濡れた鼻は潰れて血がほとばしり、固く閉じた口からは憎たらしく白い歯が小刻みに揺れていた。

その時初めて星野道夫の言葉がアドレナリンで虚な脳裏を駆け巡り、大きな罪を犯さずに済んだことに気づき 胸を撫で下ろした。
 
 
 
激しい過呼吸と焦りに目覚めて  今。


2022.04.27.05.50. - 

Yamato Ogawa.